初めまして、都内で皮膚科医をしております。
皮膚科へ来院される患者様の中でも多汗症で悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
今回お伝えするのが、
脇(ワキ)の多汗症についてお悩みの方へ、
「新薬」が承認されました!!
この新薬とはどんな薬なのか解説していきます。
製品名 | エクロックゲル5% |
一般名 | ソフピロニウム臭化物 |
製品名の由来 | エクリン汗腺(Eccrine sweat gland)を ブロック(Block) |
製薬会社 | 科研製薬(株) |
効果・効能 | 原発性腋窩多汗症 |
使用方法 | 1日1回、適量を腋窩に塗布する。 |
従来の多汗症治療は・・・??
腋窩多汗症の治療としては保険適応で「塩化アルミニウムの外用」が最も推奨されています。
こちらの記事を参照ください👇
塩化アルミニウムを行っても症状が改善しないような重度な腋窩多汗症の場合、
ボトックスの注射で治療することもあります。
また、外用以外に内服薬として
プロ・バンサイン錠が使用されることもありますが、
内服ですので、全身性の副作用(口渇、便秘、尿閉、せん妄・・・)のリスクもあります。
他には
レーザー治療、神経ブロック、交感神経遮断術などもありますが
明確なエビデンスがなく、そこまで推奨されていません。
そこで今回発明された外用薬が効果を発揮するかもしれません!!
そもそも多汗症とは?
多汗症と一言で言っても分類があります。
全身の発汗が増加する「全身性多汗症」と、
体の一部のみに発汗量が増加する
「局所性多汗症」に分類されています。
何かしらの疾患やストレスなどの原因がないのにも関わらず
原因不明の大量の汗がでる状態のこと「多汗症」と言います。
多汗症の部位としては主に
「手のひら、足の裏、脇の下、頭や顔」などですが、
今回紹介する新薬は「脇の多汗症」に効果があります。
アセチルコリンとエクリン腺
汗を分泌する器官を「汗腺」と呼びます。
👇
エクリン腺:全身にある、交感神経により支配
アポクリン腺:局所的にある、交感神経やホルモン等に支配
今回の新薬が関係するのは主にエクリン腺の方です。
エクリン腺は交感神経によって支配されています。
そして神経終末からはアセチルコリンが放出されている器官です。
アセチルコリンがエクリン腺のアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)にくっつくことで
発汗が促進されています。
新薬エクロックの作用機序・特徴
新薬は、主にエクリン腺のムスカリンM3受容体を選択的にシャットアウトする抗コリン薬です。
アセチルコリンが作用できなくなるということは
エクリン腺からの発汗が抑えられて腋の多汗症の症状を抑えることができます。
エクロックは外用薬のため、内服と違って全身性の副作用もほぼありません。
さらに嬉しいのが
1日1回、適量を腋窩に塗布するだけなので忙しい方でも手軽に使用できると思います。
現時点では、明確な薬価などは不明ですが、近々近所のクリニックでも処方できるようになると思います。
私も実際に処方してみてどのくらい患者様から反響があるのか気になるところですが、
多くの患者様に効果があって欲しいと願います!!